金融関連知識とは、資産運用に必要な知識のことです。
例えば、株式投資、投資信託、預貯金、確定拠出年金などのことを指しています。
金融関連知識①として、「景気について」まとめていきます。
経済指標から景気を知る
儲かっているときは「好景気」、儲かっていない時は「不景気」という言葉を使いますが、
景気を判断する指標が存在します。
国内総生産(GDP)
一定期間内に国内で生み出された財・サービスの付加価値の総額のことです。
数値が大きいほど、経済規模が大きいと判断されます。
また、昨年の同時期と比べたGDPの増加率を経済成長率(GDP成長率)といいます。
GDPには、名目GDPと実質GDPがあります。
- 名目GDP:物価変動含む。金額の増減。
- 実質GDP:物価影響除く。数量の増減。
内閣府より四半期ごとに公表されます。
景気動向指数
景気と関係が深い指標(以下の表)を統合化した統合指標。
内閣府より毎月発表されます。
先行系列 | ・最終需要財在庫率指数(逆サイクル) |
・鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) | |
・新規求人数(除学卒) | |
・実質機械受注(製造業) | |
・新設住宅着工床面積 | |
・消費者態度指数 | |
・日経商品指数(42種総合) | |
・マネーストック(M2)(前年同月比) | |
・東証株価指数 | |
・投資環境指数(製造業) | |
・中小企業売上見通しD.I. | |
一致系列 | ・生産指数(鉱工業) |
・鉱工業生産財出荷指数 | |
・耐久消費財出荷指数 | |
・所定外労働時間指数 | |
・投資財出荷指数(除輸送機械) | |
・商業販売額(小売業) | |
・商業販売額(卸売業) | |
・営業利益 | |
・有効求人倍率(除学卒) | |
・輸出数量指数 | |
遅行系列 | ・第3次産業活動指数(対事業所サービス業) |
・常用雇用指数 | |
・実質法人企業設備投資 | |
・家計消費支出(全国勤労者世帯、名目) | |
・法人税収入 | |
・完全失業率(逆サイクル) | |
・きまって支給する給与(製造業、名目) | |
・消費者物価指数(生鮮食品を除く総合) | |
・最終需要財在庫指数 |
先行系列:景気の動きより先行するので、予知に使えます。
一致系列:景気の動きに一致します。
遅行系列:景気の動きより遅れます。
景気動向DIと景気動向CI
景気動向DI:3ヶ月前の数値と比べて変化した割合。
景気動向CI:3ヶ月前の数値と比べて変化した数値。
どちらも上昇傾向の時は景気も良くなる方向と一致します。
業況判断DI
日本銀行が全国の1万社程度の企業経営者にアンケート調査した結果。
四半期毎に、「良い」「それほど良くない」「悪い」で回答します。
「良い」の回答率 - 「悪い」回答率
マネーストック統計
一般法人や地方公共団体、個人等が保有する通貨の残高を集計した統計。
(金融機関や政府が保有している預金等は除く。)
日本銀行が毎月発表します。
指標分類が、M1、M2、M3、広義流動性の4つがあります。
- M1:現金通貨+預金通貨
- M2:現金通貨+国内の銀行等に預けられた預金
- M3:M1+準通貨+譲渡性預金
- 広義:M3+投資信託+金銭信託+金融債+社債+国債+FB+CP+外債
※現金通貨=銀行券発行高+貨幣流通高
※預金通貨=要求払預金(当座、普通、貯蓄、各段、納税準備)-調査対象金融機関の保有小切手・手形
※準通貨=定期預金+据置貯金+定期積立+外貨預金
物価指数
企業物価指数
企業間での取引における商品の価格変動を捉えた指標です。サービスの価格は含まれません。
国内企業間の物価指数と輸入・輸出物価指数に分類されます。
原材料価格、為替変動の影響を受け、短期的な変動が大きいです。
日本銀行が毎月「速報」と「確定値」を発表します。
消費者物価指数(CPI)
家計の支出の中でも重要な商品やサービスの価格変動を捉えた指標です。
天候など景気とは別の条件に左右されやすい生鮮食品を除いた、コアCPIがよく利用されます。
対象となる品目は5年ごとに見直されます。
総務省が毎月発表します。
雇用関連指標
完全失業率
労働力人口に占める完全失業者の割合です。
総務省から毎月発表されています。
景気が良い時は低くなります。
完全失業率=完全失業者÷労働力人口
有効求人倍率
全国の公共職業安定所に申し込まれている求職者数に対する求人数の割合です。
厚生労働省から毎月発表されています。
景気が良い時は低くなります。
有効求人倍率=月間有効求人数÷月間有効求職者数
個人の消費関連の指標
家計消費支出
個人の家計全体の支出を捉えた指標です。
総務省が発表しています。
新設住宅着工面積
住宅への投資動向を示す指標です。
国土交通省が発表しています。
商業販売額
商業をしている事務所や企業の販売活動などの動向の指標です。
経済産業省が発表しています。
耐久消費財出荷指数
1年以上耐久性のある高額消費財の出荷量を示す指標です。
経済産業省が発表しています。
ここまでを一つにスライドにまとめてみました。
市場動向の要因を知る
市場の変動要因は、「景気」「金利」「為替」「物価」が大きく関係します。
景気の変動
景気が良くなっているときは、消費活動が活発になります。
つまり、よくお金が使われているので、お金の需要が高まります。
お金の需要が高まると、金利は上がります。
景気が悪くなる時は、これと逆の理由で、金利は下がります。
物価の変動
○金利への影響
物価が高くなると、高くなる前に購入しようとする意欲が高まり、消費が活発になります。
景気変動と同じく、お金の需要が高まり、金利は上がります。
物価が低くなると、もっと安くなるまで待とうとして、消費が消極になります。
これは、お金に需要が低くなり、金利は下がります。
○為替への影響
物価が高くなると、これまで100円で買えた商品が110円になります。
同じ商品を買うのに、より多くの円通貨が必要なので、円の価値が低下したと考えられます。
円の価値が下がると、円の人気も需要も減るので、円安になります。
物価が低くなると、逆の理由で、円高になります。
金利の変動
○為替への影響
金利が上がるということは、円建ての金融商品(預貯金など)の運用利益が大きくなります。
そうすると、円建ての金融商品の人気が高まり、円の需要が増加します。
需要が増えると、価格も上がるので、つまり、円高になります。
金利が下がる場合は、これの逆の理由で、円安になります。
○債券価格への影響
金利が上がると、相対的に債券利率が低くなります。
そうすると、債権の魅力が低下し、債券価格は下がります。
理由は、債券投資の知識説明で紹介します。
政策と市場動向の関係を知る
持続的かつ安定的に経済成長を遂げるために、以上の変動要因を操作する必要があります。
「金融緩和」という言葉はニュースでもしばしば取り上げられているので、馴染みがありますね。
「金融緩和」とは、景気の刺激のために、通貨貨幣量を増加させることです。
その逆に、通貨貨幣量を減少させる「金融引き締め」というものがあります。
公開市場操作
○買いオペレーション:通貨量を増加(金融緩和)
民間銀行が所有する債券等を買うことで、通貨の供給量を増加させます。
通貨供給量が増えると、円の価値が下がり、金利を下げる効果があります。
○売りオペレーション:通貨量を減少(金融引き締め)
日本銀行が所有する債券等を売ることで、通貨の供給量を減少させます。
通貨供給量が減ると、円の価値が上がり、金利を上げる効果があります。
預金準備率操作
民間銀行は預金の一定割合を日本銀行に預け入れることが義務化されています。
預金準備率操作とは、この一定割合(=法定準備率)を操作することです。
○準備率の引き下げ:通貨量を増加(金融緩和)
民間銀行が所有する通貨が増えるので、通貨供給量が増えます。
つまり、金利は下がります。
○準備率の引き上げ:通貨量を減少(金融引き締め)
民間銀行が所有する通貨が減るので、通貨供給量が減ります。
つまり、金利は上がります。
財政政策
公共事業により景気を刺激します。
一方で、金利が上昇したり、国債が増える可能性もあります。
ここまでを一つにスライドにまとめてみました。